はじめに

 世界の主要都市で被害が拡がるトコジラミだが、DDTの頃ならともかく、IPMの時代とあっては防除に手間取る厄介な相手だ。アメリカのPMP達は、室内を60℃の熱風で2時間満たす高熱処理や、化学合成したトコジラミの警報ホルモンをシリカゲルに混ぜて隠れ場所に吹き込むなど(ScienceDaily 2009/06)で対処している。
 これらの手法はいずれも、トコジラミが乾燥に弱いことを利用するものだが、時間と手間がかかる。本音を言えば殺虫剤で一網打尽にしたいところだろう。しかし、問題のトコジラミのほとんどは、屋内使用が許されるピレスロイドに抵抗性だという。
 しかし、ここで思わぬ問題に遭遇する。免除条項を適用しようにも、今では過去のものとなった薬を製造しようとする企業が現れず、せっかくの案が宙に浮いているらしい。
 翻って、わが国の「ウエストナイル熱媒介蚊対策ガイドライン」にも同じような問題があることが最近わかった。メーカー団体によれば、ガイドライン収載殺虫剤の大半が、既に製造中止になっているというのだ。PCO業界には前車の轍を踏まぬよう、緊急時に備える薬剤備蓄についても、国や地方自治体と話し合う必要があるのかもしれない。(龍)

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