PMPのための微生物制御とビジネス化のヒント(1)

はじめに

 このたびHOHTO PMP NEWS編集者から、微生物関連情報の連載の依頼を受けました。そこで、単なる微生物関連のニュースや知識を得るだけでなく、PMPが新ビジネスとして考えて頂けるような形で連載させて頂くことになりました。少々、学術的には荒っぽいかも知れませんが、微生物ビジネスに少なからずご興味をお持ちになった方の、ビジネス化の入り口あるいは突破口になればと、基礎的な知識と考え方についての情報提供をさせて頂きます。
 そもそも、私はPMP業務の究極は「微生物制御」だと考えています。私が害虫防除の仕事に関わり、ゴキブリ防除を研究している時、ふと感じたのは「ゴキブリは本当に悪者か?」でした。ゴキブリによる被害で食害は文化財など限られた分野です。最もゴキブリ被害が大きpのは「衛生被害」だと教科書に書かれていました。しかし、ゴキブリは生まれつき病原菌を保有していることはなく( うまれた時は無菌) 後天的に微生物を保有するだけです。もし、ゴキブリの保有する微生物が人の衛生に関与しなければ防除の必然は無いはずです。カの防除は、刺されて痒いからではなく日本脳炎などのウイルスを媒介するから防除の必然が起きています。衛生動物・衛生昆虫防除の必然は、実は「微生物」の存在にあります。
 このような事から微生物学に少し関わることになりました。特に「衛生」と関連の深いいわゆる病原微生物の制御を中心に専門学校(看護助産)で教鞭を取り、PMPの業務では病院の感染症対策として微生物制御、食品工場の微生物制御に関わっていました。ところが食品工場では、微生物を利用した場面が多く、いかに微生物を殺さないようにするかという部門と、余分な微生物は制御する部門が混在している中で業務をしてきました。連載させて頂く事は教科書からだけではなく、現場で得たものを織り込みながら書かせて頂く予定です。

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PMPの微生物制御の位置づけ

 PMPの業務をマーケットでどのように位置づけるか?単なる「駆除業務」「薬剤処理役務」と位置づける人は少ないと考えます。多くの方は、総合的な管理を含めて、「有害生物制御」「ペストコントロール」「害虫管理」などと呼ばれていますが、私は「環境品質マネジメント」という商品(システム)でこれらの業務を包括的に行っています。例えば、食品工場では「食品」を製造し、その品質管理を企業が行っています。そこで例えばゴキブリ防除業務は、異物防除対策であり衛生対策です。ゴキブリのいない環境を作れば異物として衛生被害は起きず製造される製品の品質は保証されます。そのことは「環境の品質」を維持することです。製品について直接品質管理をすることはできませんが、「環境品質」を高めることによりお得意さまの製品の品質管理に役立ちます。そこで我々の提供する業務は「環境品質マネジメント」であるということです。そうすると、環境品質を高める要素は鼠族やゴキブリだけでなく、その他の昆虫、微生物、埃、湿度、温度、光など多くの要素が関与します。それらを総合的に管理することがP M P としての「環境品質マネジメント」です。「環境」とは簡単にいうと、中心になるものがありその周囲が「環境」です。食品工場では中心は「食品」、医療現場では「患者」、ホテルであれば「ゲスト」です。中心が何であれ、その中心の持つ特性の品質を最大限に高めるための「環境品質マネジメント」が我々の業務だという考え方です。
 そして、これらの業務を行う時大切なことは「根拠に基づく」ことです。以前からこのようにしている、前任者がやっていた、前業者がやっていたということに基づいて業務を行うのではなく、必ず根拠を明確にしておく事です。なぜ、この薬剤を使用するのか?なぜ、この濃度を決定したのか?その根拠は明文化されているか?データはあるか?などをきちんとすることです。

見えないものを見えるように…

 ペストコントロール業務の多くは「見えるものを見えなくする」業務です。ゴキブリや鼠族、飛来昆虫、徘徊昆虫、貯穀昆虫などは対象が目に見える存在です。そして、それらを見えなく(駆除) していましたので、出来上がり評価が客観的に分かりました。ところが多くの微生物は「見えない」存在です。そしてそれ を薬剤などで制御しても「いなくなった」事は見えません。すなわち出来上がり評価がわかりにくい業務になります。しかし、ちゃんといなくなった、制御したことを理解して貰わなければビジネスになりません。そこで大切なことは、信頼される業者になることです。
 微生物の専門家は多くいらっしゃいます。しかし「環境品質マネジメント」という立場で微生物を扱っておられる方はあまりいらっしゃいません。環境の微生物制御を考える時、単独で微生物だけを取り扱うことは大変少なく、そこには衛生動物、飛来昆虫などの生物要素、埃やゴミの問題などが必ず関わってきます。ここに多くの製造・医療・生活環境に携わってきたPMPの技術が生きてきます。

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微生物とは

 バイキンという言葉は日常的に使われます。漢字で書くと「黴菌」。黴はカビを表し、歯は細菌やウイルスをさしています占そして、これらは悪玉と理解されています。カビ・細菌・ウイルスは全く違う生物です。最も小さい生物はウイルスです。身近なウイルスではインフルエンザウイルスがあります。PMPは鳥インフルエンザウイルス対策として各所で業務をしています。ウイルスは最もシンプルな構造で、中心に遺伝子(DNAかRNA)があるだけです。残念ながら外部から栄養を吸収して増殖することはできません。増殖は生きた生物の細胞にとりついて、その細胞分裂を利用して増殖します。生きた細胞にとりついていない時は単なる「粒子」です。ウイルス粒子は空中を漂っていても温度や湿度・乾燥に強く死滅することはまれです。環境で増殖することはないので環境品質マネジメントとしての仕事にはなりにくい微生物です。感染症などのおそれがある時のウイルス防除業務は発生しますが、作業者への感染防御対策がのぞまれます。
 カビは目で見える微生物です。カビというのは真菌類の1つのグループです。真菌の仲間には大きなものとして「キノコ」があります。食卓に上るキノコは真菌類でいわばカビの仲間です。小さいものとしては「コウボ」があります。キノコ・カピ・コウボの共通点は周りの栄養を利用して増殖することです。コウボは酒類のアルコール発酵に使われますが、糖を栄養にjして増殖しアルコールを産生します。カビが浴室に発生します。浴室のカビは飛沫としてタイル目地に付着した石けん・垢を栄養にし、あるいは塗装してある塗料を栄養にして増殖しています。床下の木部のカビは木材そのものが栄養源になっています。カビは殆どの有機物を栄養源にすることができます。
 細菌も周りの有機物を栄養源に増殖します。食品に細菌が付着すると腐敗することがあります。これは腐敗菌によるもので、食品を栄養源にして腐敗菌が増殖した状態をいいます。食品腐敗のように目に見える状態だけでなく、例えば食品工場の壁にある電灯用スイッチの周りが黒ずんでいるのも細菌が増殖しているからです。食品を触った手は細菌にとって十分な栄養がありこれが壁に付着して細菌が栄養源として利用しているのです。カピや細菌は環境で増殖することができる微生物なので、環境品質マネジメントとして制御対象になりやすい微生物です。

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