開会式の翌日からの2日間、朝の8時30分に開かれるゼネラル・セッションがある。両日ともそれぞれ各種の行事が予定されるのだが、呼び物はなんと言っても基調講演だろう。
そのひとつがスポーツ根性もの。
まずはゼネラルセッション恒例行事のひとつ、各地区代表者の紹介。名を呼ばれる順に、舞台上手から登場し聴衆に手を振りながら下手へ消える。1人当たりにすれば、ほんの10数秒間なのだがなんともスマート。新会長のローラ・シンプソンさんが最後に登壇する。
ここで、会長の引継ぎ式となる。会長の証のギャベル(木槌)が前会長ジョンソンさんから手渡された。ジョンソンさんによる、この1年間の物故会員への追悼の言葉で黙祷。
聴衆のお目当ては基調講演者カイル・メイナードさん。スポンサーはダウ・ケミカル。正面のスクリーンにメイナードさんの活躍するビデオが映し出される。先天的に両手両足の無いメイナードさんは、“レスリングの殿堂”入りを果たしたことをはじめ、雪のキリマンジャロ征服など、彼の想像を絶する努力と生活態度ならびに、一般市民に及ぼす影響の大きさが評価され、連邦保健福祉省(わが国の厚生労働省にあたる)長官から最高位の表彰を受けた。
両肘で体を引きずりながら舞台に登場する。と、ぴょんと体が跳ねてパイプ椅子に飛び乗る。いま26歳。その意志の強さといったらどうだ。
「10歳で先行きをあきらめたものでした。自殺も考えてたんです」。乗馬訓練などをニューヨーク・タイムズが取り上げると、大きな社会的反響を呼ぶ。「でもその頃の毎日は、精神的にも肉体的にもdisability (身体障害)とcapability (潜在能力)の戦いのようなものだったのです」。それでも、レスリングに打ち込んだ。そして「高校生だったある日、レスリング選手としてのpossibility(可能性)を見つけました。10%の可能性は努力によって20%にすることができるのです」
「皆さん方の組織も小さな可能性を集積して、大きな可能性を見つけて欲しいと思います」。最後に「Find your life! Find your future! 皆さん!人生を考え、将来を見据えてください」。客席は沸きに沸いた。スタンデイング・オベーションはしばらく鳴り止まない。