BedBug University Boot Campで学んだ トコジラミ防除テクニック

鵬図商事株式会社 奥村敏夫

 今年9 月27日~29日に米国で「BedBug University Boot Camp」が開催された。ここではトコジラミ防除の実践的なノウハウを学びます。ニュージャージーではおよそ10年前からトコジラミが問題となっており、またたく間に米国全土へ拡大したとのこと。あるPCOはその脅威を目の当たりにし、これをビジネスチャンスと捉えて試行錯誤を繰り返し、蓄積した膨大な情報とノウハウを精査して現在の完成度の高いマニュアルを完成させたのでした。
 トコジラミの防除には以下の様々なツールが利用されています。
① ドライアイスやカイロ、段ボールを用いた誘引トラップ
② マットレスおよびボックススプリングのカバー
③ スチーム洗浄機や温風機や掃除機などの電気製品
④殺虫剤
 これらを組み合わせて効率的にトコジラミを追い込んでいきます。発生しているトコジラミの数を数え、生息密度を3 段階に区分します。
 1 ~20頭なら「小」とし、21~99頭までを「中」とし、100頭以上を「大」とします。この結果に基づいて防除方法が検討されます。生息密度「小」の場合は、誘引トラップと殺虫剤の残留噴霧および直接噴霧が実施されます。「中」の場合は、掃除機による吸引後、スチーム洗浄機による局所的な熱処理が追加されます。「大」になると大型の温風機を持ち込んで部屋ごと華氏120(49℃)以上に保つ大がかりな温熱処理が採用されます。

トコジラミを調査・駆除する際に注意すべき点

服装; つなぎなどできる限りシンプルな構造のものが良い。
 靴 ; 革靴など靴底に凹凸が無いものが理想的。実際に、過去に数回持ち帰り大変な目に会ったとのこと。靴底は気付かないことが多く最も危険だそうです。よってツルツルした靴底が良いのですが、トコジラミが蔓延している部屋で転ぶと最悪な結果に…。ほどほどにグリップ力のあるものが無難です。
 荷物 ; 原則として汚染された部屋には入れない。やむを得ない場合は荷物をビニル袋に入れて密閉し、ネットに入れて吊るすなどします。(写真1 )

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■ 生息調査・駆除の手順

 用意する物 ; 簡易トラップ「Climb UP」(写真2 )、マットレスカバー「PROTECT-A-Bed 」(写真3 )、スチーム洗浄機「DE-4002+」(写真4 )、吸引力の強い掃除機、殺虫剤「Demand CS」(注釈1 )、「Phantom」(注釈2 )、「Bedlam」(注釈3 )、「Mother-earthD」(注釈4 )。

 ① まず初めに、ベッドのシーツおよび掛け布団をたたんで大型のビニル袋に入れ密閉します。(写真5 )

 ② 続いて、マットレスを中心にトコジラミの有無を目視で確認します。虫の密度が高い場合は掃除機で吸い取ります。壁面や天井に虫が確認される場合は「Bedlam」を直接、虫めがけて噴射します。(写真6 )

 ③ マットレスを縦に起こしマットレスカバー「PROTECT-A-Bed」を被せます。その際、「MotherearthD」をカバーとマットレスの間に吹き込みます。マットレスカバーを使用しない場合は、「Phantom」をマットレスに吹き付けます。(写真7 )

 ④ ヘッドボードを取り外し、割れ目や隙間にトコジラミがいないか目視で確認します。(写真8 )

 ⑤ ヘッドボードの割れ目や隙間に1 箇所あたり3 秒程度スチームを当てて駆除します。(写真9 )

 ⑥ ヘッドボードの割れ目や隙間に「TRI-DIE」を噴射します。 乾くと白く固まるため、溢れた分を刷毛で掃き除きます。(写真10)

 ⑦ 仕上げに「Demand CS」をヘッドボード裏側全体に吹き付けます。(写真11)

 ⑧ ベッドフレームのある床面をスチーム洗浄機の「DE-4002+」で熱処理します。(写真12)

 ⑨ベッドフレームに突起などがある場合は、マットレスカバーの破れを防ぐためフェルトを張るなどして保護します。(写真13)

 ⑩ 同様に他の物も、目視による調査、吸引、スチーム、薬剤処理とこれまでの工程を繰り返します。(写真14)

 ⑪ ソファの底面から内部にかけて「Mother-earth D」を注入します。(写真15)

 ⑫ コンセント隙間に「Mother-earthD」を注入します。(写真16)

 ⑬ 巾木の隙間には「TRI-DIE」を注入します。(写真17)

 ⑭ 部屋の内周は「Demand CS」を残留噴霧します。(写真18)

 ⑮ 天井の内周にも「Demand CS」を残留噴霧します。(写真19)

 以上を定期的に繰り返します。作業内容については顧客ごとにカルテを作成して詳細に記録します。
 トコジラミの生息密度にもよりますが、1 物件あたりの駆除に要す日数は短くとも2 週間以上としており、数ヵ月から半年、1 年以上の物件もあります。そのため、単回の駆除処理では完全に駆除することは極めて難しいものと思われます。

 注釈1 )Demand CS( syngenta); λ-シハロスリン(合成ピレスロイド系)フロアブル剤デマンドCSは室内の内周処理のほか、ヘッドボード、ベッドフレーム、ソファ側面など人が直接触れない場所に限定して30~50ml/㎡残留噴霧します。優れた残効性を有しています。マットレスと座面への散布は禁止。
 注釈2 )Phantom( BASF); クロルフェナピル(ピロール系)フロアブル剤ファントムはマットレス表面やソファの座面に30~50ml/㎡程度、残留処理します。高い安全性が認められています。
 注釈3 )BED LAM(McLaughlin Gormley King Company); d-フェノスリン+助剤(合成ピレスロイド系) 発泡エアゾールベッドラムは虫に直接噴射します。殺卵作用を有しています。
 注釈4 )Mother-earth D( BASF); 特殊加工の珪藻土 粉剤マザーアースDはソファの巾木の隙間、コンセントなど比較的広い空間のある隙間または液剤が処理できない場所に吹き付けます。その他、マットレスカバーにトコジラミを閉じ込める際にも吹き込みます。物理的に殺虫するため優れた残効性を有しています。

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