アース製薬株式会社 企画部学術課 角田泰男
スーパーデスモアは、第二世代抗血液凝固作用タイプの有効成分ジフェチアロールを配合した殺鼠剤である。これまでのクマリン系殺鼠成分は、有効成分を蓄積させるために、長期間連続喫食させる必要があり、また近年抵抗性が発現し効き目の低下が問題化している。新規有効成分であるジフェチアロールは、このクマリン系殺鼠成分の欠点を補うことが出来る成分で、1回の喫食で十分な殺鼠効力を有し、製剤化しても喫食忌避性がなく、抵抗性を確保したネズミにも効くという特長を有する。作用はこれまでのクマリン系殺鼠成分と同様で、外見的には何の変化は見られないが、体内では徐々に体腔や皮下などで浸潤性の内出血が起こり、餌の摂取量が減少し耳や四股が白くなり、やがて静かに死亡する。クマリン系と異なり少ない摂食で効果を発揮するが、効果の発現まで5~7日の日数が必要な点はクマリン系と差異はない。アース製薬では早くからジフェチアロールを有効成分とした殺鼠剤の開発に取り組んできたが、成分配合量が25ppmという非常に低濃度であるため、安定性の確保が非常に難しく開発に15年という時間を要したが、厚生労働省より医薬部外品の承認を得て、2006年よりデスモアプロという名称で販売を開始した。新規有効成分配合の製剤としては、なんと40年ぶりのことである。デスモアプロはジフェチアロールを25ppmの濃度で有効成分として配合、ネズミに対して嗜好性の高い小麦粉や糖類などを原料とし、ネズミが食べやすいφ5mmの赤紫色の顆粒状に成型された製剤である。このデスモアプロをPCO向けに発売したのが、スーパーデスモアで500g入りのチャック式アルミガセット包装で提供している。
使用方法としてはそのまま、トレー等に設置すればよく、還流だけで十分な効果が得られた報告も受けているが、フィールドによっては顆粒だけそのまま設置しても喫食はわずかで、ゴマ油やきな粉、カナリアシード、ハムスターの餌などと一緒に配合しておくと、喫食性が向上すると報告を受けている。スーパーデスモアは食べれば確実に効果を発揮させる製剤であるので、いかに食べさせるかが成果の有無にかかってくるため、上述した成分を参考にフィールドの状況に応じて工夫していただきたい。なお10gのスーパーデスモアで200g程度のクマネズミであれば3頭くらいを殺すことができると、計算上成り立つので、施工の際の処方量の参考にしていただきたい。
2008年には、ワックスで固めたブロックタイプも発売を開始した。この製剤は顆粒タイプでは、安定性の問題で配合できなかった、ゴマ油やピーナッツパウダーといった喫食向上成分が配合されており、他の製剤に比べて喫食性は高い。またワックスで固めているので耐水性が高く、製剤が崩れたり成分が流れ出したりする心配がない。したがって水を頻繁に使用する現場にはおすすめの剤型である。
クマネズミだけでなく、ドブネズミにもワルファリン抵抗性の発現が懸念されており、今後ますますスーパーデスモアが必要になってくるものと予測される。先に述べたように、いかに食べさせるにかかってくるので、フィールドでの工夫が必要不可欠になってくるが、アース製薬としても今後、製剤の喫食性向上は検討課題であると考えている。
なお以下に成果を発揮したフィールドで使用した餌の処方を記載するので参考にしていただきたい。
成果のあがった処方例
スーパーデスモア 100 g
小麦粉 70 g
カナリアシード 70 g
ヒマワリの種 100粒
ハムスターの餌 100 g
ゴマ油 適量
*上記処方の餌を、どの製剤でも成果の上がらなかったフィールドに設置したところ、1週間後7頭の死鼠が回収され、その後も継続的に回収でき、1ヵ月後ネズミの被害が完全に治まった。