鵬図商事技術顧問
ウイリアムH.ロビンソン,Ph.D
紫外線(UV)捕虫器は屋内の飛来昆虫防除に効果的です。最適な場所に正しく取り付けられたUVライト捕虫器はレストラン、医療施設、食品加工施設などで、ハエ類など飛来昆虫の防除に大きな効果を発揮します。
捕虫器の効果を引き出すもっとも大切な用件は取り付け場所なのです。取付けるときに考えなければならない点は以下の4つです。
●取り付ける高さ(床または、天井からの距離)
●全般的な取り付け場所と位置および壁面の性質
●ランプの設置方向(縦か、横か)
●捕虫器と飛来昆虫の侵入口(ドアや玄関)との位置関係
飛来昆虫対策としての捕虫器に関する情報の多くはイエバエの捕獲性能を基にしています。食品加工所などでイエバエは一般的な飛来害虫ですが、イエバエだけが問題だというわけではありません。クロバエ類、ミバエ類、チョウバエ類もこうした場所で問題になることがありますが、この種のハエに関する捕虫器の効果に関するデータはそう多くはありません。一般にクロバエ、ミバエは紫外線に誘引されますが、チョウバエではわずかしか誘引されないと考えられています。
また、捕虫器はスズメバチや食物に発生するある種の甲虫類など他の屋内害虫も捕獲しますが、これは夜間に窓などから入る光が弱まり、捕虫器からの紫外線と競合する光源がなくなったとき、しばしば観察されます。
■取り付ける高さ(床または天井からの距離)
イエバエは一般に地面近くを飛びます。とくにメスが産卵場所をさがしているときなどがそうです。捕虫器は通常、床からおよそ1mの高さに取り付けたときが、それより高い位置に取り付けた場合に比べて、より多くのハエを誘引し捕獲します。
ファーストフード店のように、エアコンで室内温度が21℃以下に保たれているところではハエは天井近くに集まります。あこでは空気がより暖かく、イエバエやそのほかの大型のハエはその付近にとどまる傾向があります。このような施設では、天井近くに捕虫器を設置すると効果的かもしれません。けれどもこの場合は、周囲の他の光源と競合することが多く、効果が減少してしまうこともあります。
■全般的な取り付け場所と位置および壁面の性質
取り付け箇所周辺の環境
捕虫器は一般に日光の入る窓近くに取り付けると効果が低減します。太陽光に含まれる紫外線の量はごく微量なのですが、大きな窓はいつも明るいので、ハエにとって誘引されやすいのです。
捕虫器を大型の天井照明器具や、蛍光灯が入っている広告看板の近くに取り付けることも効果を減少させます。なぜなら蛍光灯は少量の紫外線を出しているので、捕虫器のランプと競合して、誘引するハエの数を減少させてしまうからです。捕虫器は広間の隅や長い廊下の突き当たりなど、やや暗い箇所に取り付けるのが最も効果の出るやり方です。
イエバエ類や他のいくつかの種は夜間に活動します。捕虫器の取り付け位置をきめるときには、非営業時間の環境に十分な配慮が必要です。この時間帯は天井のライトやファーストフード店の広告看板の照明も消え、周辺環境は概して暗くなっていますから、捕虫器の効果がいっそう高まります。捕虫器は日中と夜間を通じて点灯を続けるべきですが、場所によっては夜の方が競合する光源が少なく、人の行き来も減りますから、より高い効果が期待できるのです。
取り付け箇所の壁面の性質
ハエは紫外線(UV)の輝度に誘引されますから、前途のように照度(ワット数)が高いほどイエバエに対する誘引性が高まります。しかしハエは反射された紫外線、たとえば捕虫器周辺の壁に反射した光にも強く反応します。ですから壁面もしくは壁面近くに取り付けた捕虫器のライトから照射される紫外線の量は、壁面の色やクロスなどの性質が影響します。
白色もしくは淡い色の壁面は紫外線をよく反射します。濃い色の壁面は紫外線の誘引力を高めることにはなりません。天井近くに取り付けられた捕虫器の光は、天井の表面で紫外線が反射するかもしれませんが、捕虫器の設置場所としては最適ではないことは、すでに述べた通りです。
このようなことから、床面方向に紫外線を反射させる機能を持つ捕虫器は、その機能を持たない捕虫器よりもはるかに効力があると言えます。そのわけは捕虫器を取り付けた場所の、壁の色に影響されることがないからです。重要なのは紫外線の光は、水平方向に照射される方が垂直方向に照射されるときより誘引効果があるということです。ですから、本体の下部に向けて紫外線が反射できるような機能を備える捕虫器なら、床面から約2mの位置にも取り付けることができるのです。
■ランプの設置方向(縦か、横か)
一般に業務用の捕虫器は、取り付けたときにUVランプが床面と水平方向になるように設計されています。これがイエバエを引きつける最も効果的な位置取りです。
使用するランプが長いか短いかについては、捕獲効果にほとんど影響しないと考えられます。捕獲性能は紫外線の照度(ワット数)の総量によって左右されます。
■捕虫器と飛来昆虫の侵入口(ドアや玄関)との位置関係
レストランや医療施設でも捕虫器が使われます。このような施設では、給食施設や外部からの通路としての入り口や廊下に取り付けられます。建物に侵入するハエを途中で捕まえられる箇所に設置された捕虫器は、建物内のハエの数を減らし、ハエ防除計画全体の一部の役割をします。
捕虫器は通路内のドアから離し、入り口との間の中央部分に取り付けると良いでしょう。こうすることにより、侵入してきたハエに新たな環境になじむ時間を与え、次いで捕虫器の紫外線で誘引することができるのです。屋外に取り付けるときは、ドアの上かその周辺のコーナーの暗い場所がベストです。
■高エネルギーランプ・300~400nm(ナノメーター)使用の捕虫器
イエバエは、320~380nmの範囲の紫外線に引きつけられます。おそらく最も引きつけられるピークは360nmでしょう。イエバエは390nm異常の波長域の紫外線には、ほんの少しかあるいはほとんど誘引されません。
ですから、300~400nmまでの波長域に、出力を集中するように設計された特殊な紫外線ランプを使用する捕虫器は、イエバエの捕獲性能に大きな優位性があるといえるでしょう。この種の高エネルギーランプと呼ばれる紫外線ランプは、ハエに対して最高の誘引効果を持っています。(通常の紫外線ランプでは、一般に出力のピーク波長が350nmにあり、余分な波長域が400nmと450nmの間に、また550nm付近にもピークが見られます。)
■捕虫器の数
ハエ防除に必要なUV捕虫器の数を決める正確な公式はありません。一般に効果的な取り付け箇所が多ければ多いほど、ハエの捕獲量は増えます(しかし捕虫器が屋内のハエを100%捕獲することはまれです)。
ハエは、紫外線の明るさとハエの種にもよりますが、2~4m先から捕虫器に誘引されます。誘引には温度、ハエの性別や生理的コンディション(老若、腹のすき具合)など、いくつかの条件があります。食品を取り扱う施設では、ハエの防除を捕虫器だけに頼るのではなく、その他の防除手段も併用するべきです。