台湾におけるヒアリ侵攻の歴史とその背景

Chin-Chen Yang (Scotty) Ph.D.
Junior Associate Professor
Kyoto University

 台湾でRed Imported Fire Ant (RIFA:ヒアリ)が最初に確認されて以来、「台湾に侵入したヒアリはもともと何処から来たのですか?」、「どのようにしてきたのですか?」との質問をよく受けます。今回はこの2つの質問への回答とともに、どのようにしてその答えに至ったかをご説明させていただきます。(学術的な専門用語抜きで

 ヒアリの世界的拡散を解明するためにアメリカ、オーストラリア 2つの大陸をまたぐ
ヒアリの遺伝子調査がUnited States Department of Agriculture (米国農務省)とBiosecurity Queensland, Australia (オーストラリア農務省)との間で開始されました。
全ての遺伝子分析の結果はヒアリ起源である南米もしくは他の侵入地域ではなく、少なくとも2度アメリカ南部から(桃園:台湾北部、嘉義:台湾南部)侵入したものであることを示していました。(図1参照)
 更に驚いたのは、ごく最近ヒアリが確認されたオーストラリア、ニュージーランド、中国
における調査データは全てアメリカ南部であることを示していたのです。

 この調査結果には重要なカギが含まれています。長年にわたりアメリカは世界有数の輸出国であることからすると、我々の想像をはるかに超える頻度でヒッチハイクでもするかのように海外向け貨物に紛れていた可能性が非常に高いと可能性があります。グローバル化が進む時代においては必然的といえますが、ヒアリは熟練した旅行者であるとともに侵入者として繰り返しその能力の高さを示してきました。その証拠に最近ヒアリの侵入が確認された日本そして韓国の両国においては最大の貿易相手国の一つである中国から大量の 貨物輸入されています。

 以上のことからヒアリは海上輸送経由で台湾に侵入したと推測できますが、しかし科学者としては推測で結論図けるのではなく、データを基に確証するべきです。幸運にも、ヒアリの分散方法と分布パターに関する情報を活用するだけで検証できる方法を思いつきました。ヒアリの特徴的の一つに単雌(Monogyne)、複雌(Polygyne)の個体群を形成する習性があります。単雌コロニーは一頭の女王が支配し産卵します、それに対し複雌コロニーは複数の女王がおりそれぞれが産卵する社会構造を形成します。単雌コロニーと複雌コロニーでは女王の数の違いだけでなく、分散方法も異なります。複雌コロニーの場合はColony Budding(巣わかれ)により分散しえ行きますが、巣わかれによる新たなコロニー形成は非常にゆっくり進行するため、広範囲に分散するには何年もの時間を必要とします。それに対して、単雌コロニーは交尾飛翔により分散します。最大、もとの巣から10キロもの距離に分散していきます。

 桃園地域における単雌コロニー、複雌コロニーそれぞれの分布パターンに着目してみたところ簡単に答えを見出すことができました。単雌コロニーは非常に高い密度で海上貨物のコンテナヤード周辺に集中しており、コンテナヤード周辺から離れるほど密度が低くことから、分布高密度のコンテナヤード周辺が台湾北部への侵入地点あることを裏付けています。(図2参照)

 このようにしてヒアリが台湾北部地域に何処から侵入したか特定することができました。

 台湾南部の嘉義地域の場合、ヒアリの発生が観葉植物や苗木栽培を主要産業とする2つの町に集中しており、これは植物とともにこの地域に持ち込まれた可能性を示しています。

 このようにしてヒアリの台湾侵入経路が解明することができました。次に、侵入外来種であるヒアリなぜ蔓延することができるのかに興味をひかれました。

 次回はこのテーマーについてお伝えいたします。

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